【会場】東北学院大学押川記念ホール
魂込められた一音、8人の音楽家の素晴らしい演奏
予選出場者8人がピアノ伴奏とともに1曲ずつ演奏するチャレンジャーズ・ライヴ。
ピアニストの田原さえさんの司会で開幕した。
モーツァルトのアダージョを演奏したのは、10歳まで日本で暮らしていたというシーバース・エマニュエルさん。予選の課題曲でもあり、美しい音色に思わず聴き入った。
イタリア・ベニスから出場したヴィクラム・フランチェスコ・セドーナさんも同じく課題曲であるモーツァルトのロンドを披露し、一音一音に魂のこもった演奏に心惹かれた。
アメリカ出身のザカリー・ブランドンさんら4人は、セミファイナルやファイナルの課題曲であるコンチェルトを披露。それぞれ単独の楽章のみではあったが、完成度は非常に高い。
マレーシアから来たズィー・ヤン・ロウさんは、ドヴォルザークのコンチェルトの2楽章を演奏したが、このまま続けて3楽章をぜひ聴きたいと思った。
音楽家として素晴らしい演奏を次々に披露する姿を目の当たりにし、残念ながらセミファイナルには進めなったものの、8人がこれまで大変な努力と準備を重ねてきたのだろうと思った。同時に、仙台国際音楽コンクール(SIMC)の出場者たちは若いながらも厳しい闘いの世界に挑んでいるのだと想像させられた。
「牛タンを毎日食べています!」インタビューでは素顔も
演奏を終えると、司会の田原さんがインタビューする時間があり、これが実に面白かった。
高校生の松木翔太郎さんは初めて仙台を訪れたといい、牛タンが気に入って毎日食べているという。
「たくさん食べてこれからもどんどん成長してください」という田原さんのコメントには会場から笑いが。松木さんは若いながらも堂々とした演奏で、筆者もすっかりファンに。ぜひ牛タンをエネルギーに世界に羽ばたいてほしい。
リアン・マガウアンさんは、オーストラリアからご両親が会場に聴きにいらしていた。お母様へのプレゼントとして急きょプログラムを変更して演奏したのが、ドヴォルザークの「母が教えてくれた歌」だったというエピソードが紹介された。表情豊かで思わず涙してしまう演奏は、応援に駆けつけてくれたご両親への想いが込められていたのだと分かり、ますます感動してしまった。
オーストリアから来たユリアン・ヴァルダーさんは仙台の印象を聞かれ、「人々の温かさ、礼儀正しさ、他人へのリスペクトなど他の国には見られない素晴らしい国民性を感じる」と答えてくれた。ちょっと誇らしい気持ちになったと同時に、また仙台で演奏する機会を持ってくれたらと願う。
SIMCの組織力の素晴らしさとボランティアのサポートの良さを語ってくれたのはヤニス・グリソーさん。今回で2回目の出場というが、前回出場時に良い印象を持ったことが再度出場する決め手になったそうだ。
出場者の人となりが分かると、ぐっと親近感が持て、今後の活動を見守り、応援したい気持ちが沸いてきた。これからも仙台との縁が続き、またいつでも演奏に来てほしい。
フィナーレは全員で日本の歌を
ライヴの締めくくりは何と、全員でのアンサンブル。ヴァイオリニスト8人による「日本の四季メドレー」というとても贅沢なものだった。当日の朝に楽譜を渡したばかりというが、「花」「夏の思い出」「ふるさと」など懐かしい日本の歌曲が才能ある演奏家たちの競演で、新たな命を吹き込まれたようだった。ちなみに筆者の後ろの女性二人組は一緒に歌うほど感激していた。
最後は割れんばかりの拍手が長く続き、心地よい充足感に浸りながら帰途についた。
予選を終えて疲れているであろう中、素晴らしい演奏を披露してくれた8人と、チャレンジャーズ・ライヴの企画運営に関わった多くの方々に感謝の気持ちでいっぱいである。
心地よい押川記念ホール
最後に、会場となった東北学院大学五橋キャンパスの「押川記念ホール」について紹介したい。
とても素晴らしいホールなのだ。
当日会場である東北学院大学五橋キャンパスに着くと、「押川記念ホールはこちら」の表示を掲げてくださっている方々が。(おそらく会場運営サポート部門の方々だと思う)このホールが初めての身にとっては有難い案内だった。おかげで迷うことなく予定より早めにホールに到着。
会場に入るとステージ正面のパイプオルガンが目に入り、礼拝堂であることが分かるが、全体の壁が白を基調としているせいか、落ち着いた中にも明るい雰囲気が感じられる。
それぞれの座席の前には聖書と折り畳みテーブルが設置。
実はこのテーブル、鑑賞に大変役立った。プログラムの他、眼鏡、筆記用具を置いてメモをするのにも重宝したのである。
新幹線の座席前のテーブルは倒すと窮屈であるが、ここのホールのテーブルは実に書きやすい高さに設置されている優れものである。
周囲を見渡すとプログラムやパンフレットを置いている人が多く、皆さんも活用されていた。そのせいか何かくつろげる気持ちになった。
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座席前のテーブル |
このホールでもう一つ感心したのはトイレ。
休憩時間に行ってみたが、女性用トイレの個室は14室あり、渋滞することなく使用できた。
客席が2階まである広いホールであるが、この日は1階のみ開放したようだ。
受付の方によると、入場者数は220名ぐらいとのことであるが、私の感覚では300名は入っているように感じた。
これまで多くのホールで演奏を聴く機会があったが、快適で心地よい時間を過ごすことができるこのホールは、筆者のお気に入りのホールの一つになった。
広報宣伝サポートボランティア 三浦(睦)


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