2024年6月14日、日立システムズホール仙台 交流ホールで行われた
「今をきらめく一等星 ルゥオ・ジャチン デニス・ガサノフを迎えて」を聴いてきました。
皆様ご存じの通り、ジャチンさんは、第8回仙台国際音楽コンクールピアノ部門優勝、
ガサノフさんは同ヴァイオリン部門第2位となった方々です。
お二人が同じ舞台に立つということで、交流ホールはほぼ満席のうえ、開演を待ち望む聴衆の方の熱気に
仙台国際音楽コンクール ボランティアプロジェクトVol.29
「今をきらめく一等星 ルゥオ・ジャチン デニス・ガサノフを迎えて」
【日時】2024年6月14日(金) 19:00開演
【会場】日立システムズホール仙台 交流ホール
【出演者】ルゥオ・ジャチン(ピアノ)
デニス・ガサノフ(ヴァイオリン)
【演奏曲目】
J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV1006から
Ⅰ.プレリュード、Ⅱ.ルール、Ⅲ.ガヴォット
エルンスト:無伴奏ヴァイオリンのための6つの多声的練習曲から第6番「夏の名残のバラ」
(以上、ガサノフによるソロ)
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲
(以上、ジャチンによるソロ)
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調op45
(ガサノフ、ジャチン)
【アンコール】
マスネ:タイスの瞑想曲
(ガサノフ、ジャチン)
この演奏会のプログラムにはお二人からの曲に関するメッセージが記載されていました。
それによると、1曲目の無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータは、バッハがケーテン侯宮廷楽長時代に書いた曲で、3つのソナタと3つのパルティータはその順序がキリストの人生を反映されているとのこと。
そのような情報を念頭に演奏を聴くと、プレリュード、ルール、と進むにつれて苦しそうな表情を浮かべながら音を絞り出すように演奏するガサノフさんは、キリストの苦難や苦悩を映し出しているかのようでした。
しかしガヴォットでは、何ものからも解き放たれ悟りを開いたかのような明るく美しい和音で、穏やかに時折笑みを浮かべながら演奏するガサノフさんの姿から、彼の曲に対する解釈が垣間見えたように感じました。
2曲目のエルンストは、ガサノフさんも最も難曲というだけあり、複雑で並外れたヴァイオリンの技術を要する曲が、聞き覚えのあるアイルランド民謡のバリエーションの形でいくつも繰り返され、懐かしくも、出口の見えない迷路に迷い込んだかのような感覚になりました。
2曲とも、ガサノフさんの高度なテクニックを十分に堪能できたプログラムでした。
ジャチンさんが演奏したラフマニノフは、筆者は初めて聴く曲でした。この曲は激しく不調和なハーモニーが随所に出ており、暗く沈んでいくような感じに聞こえました。ジャチンさんからのメッセージには、この曲はラフマニノフの後期の音楽を象徴する曲で、聴衆の皆さんには彼の「絶望的」な雰囲気を感じてもらえれば、とありました。
そういえば、以前、広報誌「コンチェルト」(※注)のインタビューで、ジャチンさんはその音楽がもつ物語を聴き手に伝えられるような演奏家になりたいとお答えになっていました。今回の演奏はまさにそのような演奏で、ラフマニノフがアメリカに降り立った後に過ごした人生の出来事や故郷への思いが物語のように、音に乗っていたように感じました。目指す音楽家像に着実に向かっているジャチンさんの今後を応援し、注目したいと思います。
最後はグリーグ作、ヴァイオリン・ソナタでした。グリーグといえば、ペールギュントのようなノルウェーの自然をモチーフにしたすがすがしい音楽を思い浮かべますが、この曲は出だしからなにやら不穏で、得体のしれない何かが近づいてくる不安感を、ガサノフさんとジャチンさんがお互い切磋琢磨するようなかけあいで一層強調して演奏されていました。
約1時間半の演奏会が終わり、会場を出たところで、ガサノフさんとジャチンさんが揃って来場者と写真を撮ったり談笑している姿をみて、仙台国際音楽コンクールが心温まるアットホームなコンクールであることを改めて感じました。
このようなコミュニケーションが今後も続くことを願ってやみません。
※注
広報誌「コンチェルト」 | 仙台国際音楽コンクール公式サイト (simc.jp) Vol.8-9をご覧ください
コンクールボランティア W

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