2023年2月13日月曜日

中野りな出演 府中の森 めばえコンサート Vol.54 報告

                                                                              ©kisekimichiko

2023年2月11日、東京・府中市で行われた、中野りなさんが出演されたコンサートを聴いてきました。中野りなさんは第8回仙台国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門に出場し、史上最年少の17歳で優勝されたヴァイオリニストです。中野さんは仙台での入賞のほか、第90回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門第1位など、数々の受賞を得ておられます。現在も桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)3年に特待生として在学中です。今回のコンサートは中野さんと同じく第90回日本音楽コンクールで第1位に入賞(クラリネット部門)された亀居優斗さんとのジョイントコンサートでした。この日のアンコールはお二人だけで珍しい曲を披露されるなど、楽しい雰囲気の中にも、これからの活躍が予想される公演となりました。

今回のコンサートは府中の森芸術劇場ウィーンホールでの開催でした。「若い才能のある音楽家を支援する」というコンセプトのもと、求めやすいチケット代(1,500円)で音楽を気軽に楽しみながら、若い音楽家を応援できるコンサートシリーズとなっています。これまでも仙台国際音楽コンクールに出場した音楽家の中では樋口一朗さん、坪井夏美さん、青木尚佳さん、石原悠企さんが出演されています。


府中の森 めばえコンサート Vol.54
 ヴァイオリンとクラリネットが奏でる魅惑の旋律



【日時】2023年2月11日(土) 14時開演
 
【会場】府中の森芸術劇場 ウィーンホール (東京都府中市)
  
【出演者】中野りな(ヴァイオリン)& 小森谷裕子(ピアノ)
     亀居優斗(クラリネット)& 大崎由貴(ピアノ)

【演奏曲目】
パガニーニ/カンタービレ(中野&小森谷)
モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第22番 イ長調 K.305 (中野&小森谷)
ショーソン/アンダンテとアレグロ(亀居&大崎)
プーランク/クラリネットとピアノのためのソナタ(亀居&大崎)
R.シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調Op.18 第1楽章(中野&小森谷)
フバイ/カルメン幻想曲(中野&小森谷)
ウェーバー:グランドデュオコンチェルタント 変ホ長調op.48(亀居&大崎)
アンコール
 ダリウス・ミヨー/クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための組曲 
             Op.157bより第3曲「Jeu」(中野&亀居)


では、中野りなさんの演奏を聴いた感想を記していきたいと思います(もちろん、亀居さんのクラリネットもなめらかな音と抜群のテクニックを伴った演奏で、すべての曲を堪能しました)。

最初の「カンタービレ」は華やかなテクニックを駆使した曲が多いパガニーニの作品としては珍しく、叙情的にシンプルな旋律を奏でていく曲でした。中野さんの演奏はつややかな音色と伸びやかな表現で聴衆を晴れやかな気持ちにさせました。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ(K.305)は6月の優勝記念リサイタル(後述)でも演奏される曲です。中野さんは軽快でストレートな表現で全曲をまとめました。コンクールの際は審査委員の先生方から、すべてのファイナリストに対して、今後モーツァルトをもっと勉強するように課題が出されていましたが、この日の中野さんのモーツァルトは速い楽章、ゆっくりした楽章を通じて軽みと絶妙な間があり、コンクール後に研鑽を重ねたことを裏付ける演奏でした。読者の皆様も6月のリサイタルでそれを確認しながら、優雅な演奏に身をゆだねてください。

R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ。この日は第1楽章だけでしたが、6月のリサイタルでは全曲が演奏されます。この日の演奏は前述の2曲と音色がガラッと変わって、会場は違う雰囲気の空気に包まれました。意識的に音色の使い分けをしているのか、生来のものなのかは分かりませんが、中野さんの大きな才能を感じた瞬間でした。力強く、メリハリのある演奏で、情熱的な部分も静かな部分もしっとりした中にも緊張感のある音色で、このソナタの曲想にぴったりでした。6月のリサイタルでは、力強い情熱的な音色をぜひ味わっていただきたいと思います。

続いてのフバイによる「カルメン幻想曲」は、歌劇「カルメン」のテーマを元に様々な技巧が華やかに散らされている、聴き応えのある曲でした。中野さんの演奏はフレーズとフレーズの間も丁寧で、とても情熱的なのですが余裕があり、高度なテクニックを使っていると感じさせず、細部まで音楽性があり音楽を楽しんでいる様子が伝わってきました。

カーテンコール後の亀居さんとのアンコールはヴァイオリンとクラリネットだけという珍しい編成で、楽しく不思議な感じのする小曲でした。二人の高い演奏テクニックが絡まって、会場からも大きな拍手が湧いていました。

仙台国際音楽コンクールに出場されていた中野さんは、予選からファイナルまで楽しそうに演奏し、見ていて幸せな感じを聴衆に与えていたことを覚えておられますか?それはこの日もまったく同様で、終始微笑みをたたえて演奏されていました。中野さんはすでに様々な表現やテクニックをお持ちですが、どんな曲を演奏されても共通していることは、後味が本当に爽やかなことです。思い出しました!ヒラリー・ハーンの演奏を聴いた後はこのような感覚が残るのです。


いよいよ6月には、中野りなさんの第8回仙台国際音楽コンクール優勝記念リサイタルが仙台と東京にて開催されます。共演は日本の若手演奏家の中でもっとも活躍されているピアニストの一人である小井土文哉さんという、豪華な組み合わせです。皆様もぜひ足をお運びいただき、多彩なプログラムをお楽しみください。リサイタル後には中野さんから、幸せに満ちた爽やかな後味をもらえることでしょう。

東京公演 6月15日(木)19:00 浜離宮朝日ホール 

      仙台国際音楽コンクール公式サイト

仙台公演 6月18日(日)14:00 日立システムズホール仙台

      仙台国際音楽コンクール公式サイト 


また、第8回仙台国際音楽コンクールのファイナル/ガラコンサートでの中野さんのライブ演奏CDも発売中です。爽やかなモーツァルトに加え、一般に難解と思われているバルトークも中野さんが楽しく明快に弾きこなしてる姿が音だけ聴いても見えてくるようなCDになっています。

 仙台国際音楽コンクール公式サイト



広報宣伝サポートボランティア  岡

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