2016年6月7日火曜日

ヴァイオリン部門記者会見 (質疑応答編)

ヴァイオリン部門、記者会見の記事の続編、質疑応答の部分をご紹介いたします。この日の質疑応答の内容は、とても興味深い内容だと感じました。皆様にも楽しんでいただけたら、嬉しく思います。では、以下ご報告いたします。
(なお、回答者の敬称を省略させていただいております)


Q: 堀米委員長ににうかがいます。ファイナルにおいて、メンデルスゾーンと選択曲の審査の割合の様なものはありましたか?
堀米: それは個々の審査委員の方の判断なので、皆さんがどうお考えになったか、私は分かりません。やはりトータルで見ていますので、どちらで判断したということはないと思います。メンデルスゾーンは皆さん同じ曲として演奏しましたから、比較はしましたけれども、だからといってメンデルスゾーンでどっちが良かったということではなかったですね。やっぱりトータルの演奏で自分がどう感じたかということでした。もちろん、テクニックだとか音楽性だとか、色々な要素があります。最終的には審査委員一人一人の好みといったらおかしいのですが、自分が好きか嫌いかというところも入ってくるんですね。それで私はいいと思います。全人格を掛けた点数の付け方ということで、私はそこに全幅の信頼を置いております。

Q: 堀副審査委員長にうかがいます。堀米先生がオーケストラの神様のような方、お二方に副審査委員長をお願いしましたとお話しされていたかと思います。堀先生は実際にファイナルを聴かれていて、オーケストラに合わせるという点から審査のポイントをお話し下さい。

堀: 確かに個人差はあります。オーケストラを聴きながら演奏している人とか、自分が強くてオケを引っ張っていくとまでは言いませんが、何んと言いますか・・・。オーケストラが影響されるという面では、テンポとか、間にオーケストラを挟んで対話するとか、いろいろなところで影響を受けやすい曲がほとんどでした。シューマンを含めて。

Q: では、このコンテスタントのこういうところ、ああいうところが良かったという具体例をお話しいただくことは可能でしょうか。
堀: 具体的にですか?それは・・・その時、その時の全ての箇所を言わないと・・・。シューマンの時など、ほとんど皆、危なかったですね。あの時はまだ、オーケストラの方も慣れていませんから、(コンテスタントが)ちょっとつまずいていても、目をつぶって次に行くか・・・まあ、そう言う事ですね。それは質問する人に文句を言ってください(笑)。その場その場で個人差がいっぱいあります。それは今この場でいうようなことではないと思いますけれども・・・。その割には、落とし穴がいっぱいありますから、皆クリアーして、よくゴールまで来たなという印象です。この辺位の形容詞でしか言えませんよね。個人で誰がどうのこうのと言う場ではないと思います。予選のモーツァルトもそうでしたが、特にシューマンでは、「これ最後まで行くのかな・・・」という人もいました。でも、誰一人として途中でストップする人がいなかった。何も事故がなかった。かすり傷程度で、衝突事故とか、転落事故とか全くなく来たこと自体が、総体的にレベルが高かったと思うのです。ここにいるファイナルの6人はそういう心配はあまりなかったのですが、シューマンではそういうところが沢山見受けられました。メンデルスゾーンには、オーケストラとの関係だけではなく、個人のソロのパートでもそういう箇所がいっぱいありますから・・・。もう1曲のプロコフィエフなどの選択曲は自分の曲として、皆さん手の中に入っているので、そのような心配は全く感じられませんでした。むしろ、メンデルスゾーンではオーケストラとの面もそうですが、ソロでの面がですね・・・、そして特にシューマンはオーケストラとの絡みが一番・・・。まあ、どこがどうというのは個人的ことはちょっと(差し控えたい)という感じですが、誰もブレイクしなかったということは素晴らしいことではなかったでしょうか。やっぱり転ぶこともありますからね。

Q: ロドニー・フレンド副審査委員長にもお聞きします。オーケストラとの関係性について。
フレンド: 伴奏する側のオーケストラで、こんなに同じ作品を何回も、何日もというのは、(堀先生に顔を向けて、同意を求めながら)、経験したことはないですよね。本当にオーケストラとしては、大変なお仕事だったと思います。私たちのように、オーケストラの中で過ごしてくると、素晴らしいオーケストラもあれば、うーんという所もありました。また、素晴らしいソリストとの出会いもありました。共演した偉大なるソリストの中には、ルービンシュタインとか、ホロヴィッツとか、そういった素晴らしい方々がいらっしゃいました。彼等は音楽をギューっと伸ばすというのでしょうか、引っ張るのです。しかしながら、その中でしっかり保っているものがある。今回のコンクールの若い皆さんの演奏を聴いていて、予選で終わってしまった方、セミファイナルで終わってしまった方、そしてファイナリストになれた方、どの方々もソリストとして一所懸命やってましたが、これからソリストとして更なる30年、40年やっていく中で、決して忘れないで頂きたいのが、パルス(脈)をしっかりと刻みつつ、それを見失わずに曲をストレッチ(伸ばす)ことができるかということなのです。このパルスを見失ってしまうと、私どもオーケストラは全く付いていくことができません。ですから、パルスを保ちながら、それが乱れることなく、かつ即興性の高い演奏をするということが大事なのです。歌手はそういう所がとても上手ですね。声楽家は体がそのまま楽器になりますから。でもヴァイオリンを演奏するということは、楽器が体とは別に存在しています。体の外にある楽器が心となり、人間の声となるようなところまで練習して頂きたいと思います。パルスがなくなってしまうと、オーケストラはどっちに行ったら良いのか、今自分たちがどこに立っているのか、そして聴いている聴衆の方々に到るまで自分たちの立ち位置を見失ってしまいます。皆さんはこれからの人生を掛けて、即興性にあふれながらも、そのパルスが乱れない。そんな演奏を目指してください。私の話の最後は、大好きな言葉で締めたいと思います。"Sing and Dance"、歌って、踊ってください。私はそれを皆さんに最後にお伝えしたいと思います。

Q: 3日間聴かせていただき、本当に定期演奏会を聴いているようなコンクールで、感銘しました。堀米委員長にうかがいます。点数の付け方なのですが、メンデルスゾーンと20世紀の作品と別々に付けて合わせるのか、トータルで付けられるのかを確認したいです。

堀米: ファイナルでは点数は付けません。そして、それは個人個人違うので、もしかしたら自分の中で、メンデルスゾーンはこれ位、ストラヴィンスキーはこれ位というように付けている審査委員がいらっしゃるかもしれませんが、それは個人個人違うので、私は分かりません。私自身、個々にメモを書くことはありましたが、点数は付けていません。

事務局補足: 公式サイトに公開されていますが、審査の規定として、まず1位、2位という順位を出すか出さないかという投票がありまして、その後、1位の方はどなたが良いという投票が行われます。投票制です。公開されておりますので、ウエブサイトをご覧になれば、よく分かると思います。

Q: アンナ・サフキナさんにうかがいます。ショスタコーヴィチの2番はどうして選ばれたのですか。
サフキナ: 実は、私のレパートリーの中にはショスタコーヴィチの1番のヴァイオリンコンチェルトがいつもありました。そもそもショスタコーヴィチというのは、私の大好きな作曲家です。ショスタコーヴィチの音楽は私にとって、非常にしっくりくる音楽、とても近い音楽なんですね。そういう意味で、今回課題曲の中にショスタコーヴィチのコンチェルトが入っていることを知り、是非2番を弾いてみようという気持ちになったのです。実はコンクール前に2番を弾いたことはありませんでした。でも、今回ぜひ仙台で弾きたいと思い、コンクールの1ヶ月前ほどから弾き始め、存分に弾きこんで参りました。正直言いまして、決して容易ではなかったです。たぶん1番より、暗譜すら難しい曲ではないでしょうか。しかし、本当に素晴らしい音楽で、私は2番が大好きになりましたし、仙台で今回弾いたことを残念には決して思っていません。非常に複雑で、とらえにくい音楽だったということが、この結果に結びついたことがあるかも知れませんが、私は今回仙台の皆さんに温かく、この曲を聴き、受け止めて下さったことをとても嬉しく思っております。

Q: 仙台フィルもこの曲は初めてだったと思います。限られた時間で、オケ合わせやゲネプロの様子はどうだったでしょうか。

サフキナ: おっしゃる通りで、大きな舞台で弾くことは私にとっても、私がマエストロと合わせることも、そして仙台フィルの皆さんにとっても、最初のリハーサルから、なかなか大変だったかなという印象がありました。しかも、私のプログラムが非常に長いものになりました。ショスタコーヴィチの2番は35分位かかります。ですから、弾き込んではきたものの、35分ともう1曲を合わせて、最後まで弾けるのかどうかということが、すこし不安になった瞬間も実はありました。そして、今回私は仙台フィルの柔軟性というものに、すごく驚かされました。とても弾きやすかったです。今までいろいろなマエストロの先生方と演奏させていただきましたし、いろいろなオーケストラとも共演させていただきました。決して彼等を悪く言う訳ではありませんが、マエストロ広上と仙台フィルとの共演は、私にとって本当に演奏しやすい、とても弾き心地の良い舞台だったということを申し上げたいです。

Q: ユジィンさんにストラヴィンスキーの事をうかがいたいです。今まで弾いたことはあったのですか。
ユジィン: 今まで弾いたことはなく、今回が初めてでした。でもいつも学びたいと、ずっと思っていました。非常に個性豊かで、バラエティーがあるところに魅かれておりました。斬新なところと古典的なところの素晴らしいコンビネーションにも興味を持っておりました。私がストラヴィンスキーのコンチェルトに興味を持ったのは、このような理由です。だから今回コンクールに来て、是非この曲を弾きたいと思い選びました。

Q: すごく楽しそうに弾かれていたように思ったのですが、今回仙台フィルとの共演はいかがでしたか。

ユジィン: オーケストラと演奏して、とても楽しかったです。ストラヴィンスキーの演奏は本当に大変で、一見シンプルに見えますが、とても難しいところがあります。フレーズや音楽の性格が目まぐるしく、何回も変化しますので、非常に集中力を必要とする曲だと思っております。実はリハーサルの時、すこしショックを受けました。私の想像していたものと少し違うところがありまして、これで大丈夫かなと心配になっていました。でも実際、本番のステージに上がってみて驚きました。オーケストラのメンバーと指揮者の方がとても集中して下さって、素晴らしいものを作ってくださいました。私としても、とても楽しんで演奏できました。オーケストラの方々もノンストップで3週間もいろいろな曲を演奏して下さり、想像もできないほどの素晴らしいお仕事をして下さったことに、心より感謝しております。

Q: 堀米先生にうかがいます。モーツァルトはエディションの指定がありましたが、シューマンのコンチェルトは指定されなかったのですか。

堀米: どれでも大丈夫ということです。エディションによって音が変わることとか、それが一番重要な問題ではなかったので、特に指定はしませんでした。

Q: カルメノワさんにうかがいます。2014年のリピッツァーコンクールの記事で、楽器を入手するのに苦労したと書かれていました。その際の楽器を今もご使用ですか。
カルメノワ: その時の楽器は今使っていません。それは私的に借用していたものだったからで、2年後に別の楽器に変わりました。そして、今の楽器を見つけるのも、随分長い時間がかかりました。自分に合う楽器を見つけるまで、1年間で5つの楽器を試してきました。今しばらくは、この楽器を使って演奏しようと思っています。

Q: 事務局にうかがいます。ヴァイオリンの実際の応募者数は何人だったのですか。

事務局: 100名です。

Q: 今回日本人の応募者の中に非常に優秀な方が沢山おられました。それは大歓迎なのですが、どうしても欧州からの応募者が少なくなっているような印象があります。同時期にモントリオールの開催があるということで、ここにいる方も悩んだのではと思います。ここでどうするとは言えませんが、日程的な対策を立てるなどのご検討を。

事務局: ありがとうございます。日程がかぶることは重々理解しておりました。良いアイディアがあれば、教えていただきたいと思いますが、自分たちでできることを確実にやっていきたいと思います。

Q: スティーヴン・キムさんにおうかがいします。前回優勝のリチャード・リンさんもカーティス音楽院出身です。お知り合いですか。また、リンさんから出場を勧められたということはありますか。
スティーヴン: 知っております。実は私が入学する前に卒業されてしまったのですが、お互いに良く知っております。カーティス音楽院はとても小規模で、家族のような雰囲気の学校ですので、今もよく交流しております。ただ、彼からコンクール受験を勧められた事はなく、自分で挑戦してみたいと思ったので参加しました。

Q: スティーブン・キムさんにおうかがいします。若いころから、色々なコンクールに挑戦されて、すでに活躍されていますが、なぜ仙台を受けようと思われたのですか?

スティーブン:  仙台の国際音楽コンクールを受けようと思ったのは、国際コンクールが他の地域では多いのですが、アジアでは比較的少ないということで、今回こちらに来て、アジア地域で皆様と音楽を共有する良いチャンスだと考えました。日本に来るのも初めてでしたし、アジア地域でも、もっと自分の存在を高めたいと思ってこちらに来ました。とても素晴らしい体験をしたと思っております。

Q: ジャン・ユジィンさんにうかがいます。今後、どのような演奏家になっていきたいのか、抱負をお聞かせください。
ユジィン: 小さい時には大きな夢を抱いていました。コンサートを開くとか、コンサートマスターになるとか・・・いろいろありました。今では音楽がとても好きで、アメリカで博士過程に進みました。これは私にとって特別なことで、練習の毎日以外に他の事をする時間はほとんどありません。でもそれとともに、書いたり、読んだりなどして、音楽の解釈の勉強にも力を注いでおります。それによって、私は音楽というものを考え直すことができるようになると思っています。今、私が是非取り組みたいと思っている事は尊敬する作曲家やその作品の内容を理解し、私なりに解釈して聴衆の皆様と共有したいということです。聴衆の皆様が私の考えに同意して下さるかどうか分かりませんが、私なりの解釈を聴衆の皆様と一緒に共有できて、その作品の美しさに出会うこと、それが今私が求めていることの全てです。

事務局: 以上をもちまして、記者会見を終了させていただきます。


ヴァイオリン部門は終わってしまいましたが、今週末よりいよいよピアノ部門スタート。楽しみはまだまだ続きます。ご一緒に楽しみましょう。


広報宣伝サポートボランティア   岡
 

 

 

 

 

 
 
 

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