2015年6月20日土曜日

第292回仙台フィル定演レポート

 
 津田さんのピアノが「小泉芸術」で深い精神性へ昇華したコンサート
 
(c)Christine Fiedler
 

6月19日、日立システムズホール仙台で第292回仙台フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会の第1日目があり、聴いてきました。

今回の指揮は首席客演指揮者の小泉和裕さん。協奏曲でのソリストは第3回仙台国際音楽コンクールピアノ部門優勝者の津田裕也さんでした。津田さんは仙台出身ということもあり、今回も多数の「津田ファン」と思われる方が会場を埋めていました。

指揮/小泉和裕
ピアノ独奏/津田裕也
仙台フィルハーモニー管弦楽団

プログラム
 ブラームス/ピアノ協奏曲第1番 二短調
 バルトーク/管弦楽のための協奏曲

開演前、ロビーコンサートを聴きながらプログラムを手にして、今回のコンサートマスターは神谷未穂さんと知りました。以前、コンクールの広報誌のインタビューで神谷さんにお目にかかった際バルトークがお好きとうかがっていたので、今回の定演が一層楽しみになりました。
 
この日の演奏は指揮者の小泉和裕さんの個性が見事に表わされた演奏だったと思います。仙台フィルもヴェロさんが振る時と比べて、これが同じオーケストラかと思うほど音色や響きが違いました。その響きは単色系で深く厚く、演奏も余り小細工はせず、真摯で芯の通った造形に貫かれています。
 
プログラム前半は津田裕也さんソロによるブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」でした。この曲はその特徴と小泉さんの演奏姿勢が一致した印象を受け、とても感銘深いものでした。津田さんのピアノもこれまでの清潔感はそのままに、ダイナミックスが増して、タッチにも頼もしい位の力強さがありました。ブラームスのピアノ協奏曲はオーケストラと対等に渡り合えるだけの体力が要求されると、よく音楽関係の本に記されていますが、津田さんの安定したテクニックは曲が終わるまで全く崩れることがなく、安心してブラームスの世界に浸ることができました。小泉さんの重厚さと津田さんの清々しさが対照的で、曲全体のバランスを形成していたと思います。深い森に白い光が差していると形容すればピッタリでしょうか。カーテンコールも熱く、津田さんが何回舞台に呼び戻されたか、数えていられない位です。入退場を繰り返す津田さんの足取りに「貫禄」さえ感じました。
 
後半はバルトークの代表曲、「管弦楽のための協奏曲」でした。ここでも小泉さんは一つの意志を貫くような統一感のある姿勢で、体の奥にずしんと来るような聴き応えを感じさせてくれました。最近は「明るくて分かりやすい」バルトークの演奏に接することが多いのですが、この日の小泉さんのバルトークは良い意味で客に媚びない、力に満ちた演奏でした。それが集約された終楽章はオーケストラも大熱演で、「血が逆流する」という表現が大袈裟でない感動を与えてくれました。
 
この日の2曲は正に「小泉芸術」と言っていいほどに、精神的に深く、まっすぐな演奏でした。各地に熱烈な小泉ファンがいると聞いたことがありますが、思わず納得です。仙台フィルの発表では、2日目(6月20日午後3時開演)も若干当日券が発売されるようです。まだ迷っている方には、日立システムズホール仙台に足を運ぶことが正解だと申し上げたいと思います。
 
 
津田裕也さんは来月の7月13日、多賀城出身のヴァイオリニスト、郷古廉さんとのDUOリサイタルで、シューベルト、プロコフィエフのヴァイオリンソナタ他を聴かせてくれます。こちらも是非!
 
 
広報宣伝サポートボランティア   岡
 
 
 
 

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