12月24日(水)、第3回仙台国際音楽コンクールピアノ部門第6位のヴィチェスラフ・グリャズノフさんによるコンサートが仙台市街にあるTea Lounge REFRAIN(ルフラン)で開催され、聴いてきました。この日はクリスマスイブ、会場にはツリーも飾られ、クリスマス気分に満ちていました(グリャズノフさんのプロフィールはこのイベントの予告記事をご覧ください)。
ヴャチェスラフ・グリャズノフ
ピアノコンサート&公開レッスン
コンサート
チャイコフスキー「四季」全曲 op.37
プログラム前半はグリャズノフさんによるコンサートでした。月刊雑誌のために出版社から依頼されて作曲されたこの曲は、「白夜」「クリスマス」など、1年12ヶ月の風物を描いた12曲からなっています。この日は各曲の関連性を大切にしたいというグリャズノフさんの意向で40分間、通しで演奏されました。会場には作曲や音楽教育で活躍されている新本和正さん(この日の受講生お二人と共同でCD製作をされています)が選択した各曲にマッチした絵画がプロジェクターで投影され、雰囲気を盛り上げてくれました。グリャズノフさんの演奏は小品が集まった作品に相応しく、ホームコンサートの様な雰囲気で、まるで外は雪が降りつむ田舎の家の中で暖炉脇で聴いているような感覚を受けました。後半に進むにつれ感情表現の幅も広くなり、11曲目の「トロイカ」で大きく盛り上がり、最後の「クリスマス」でまとめるという、全曲を一つの作品の様に楽しませていただきました。
公開レッスン①
菅原 望
ベートーヴェン/ピアノソナタ第14番「月光」
公開レッスンの一人目の受講生は第5回仙台国際音楽コンクールにも出場された、仙台市出身の菅原望さんでした。菅原さんは現在東京藝術大学の大学院在学中。すでに豊富な演奏活動を重ねています。この日の受講曲目は有名な「月光」ソナタで、まずは菅原さんが通しで弾いて、グリャズノフさんがレッスンをするという流れでした。
菅原さんの演奏は集中力と統一感がある素晴らしい演奏で、グリャズノフさんも「繊細な気持ちが込められた哲学的な演奏で才能を感じる」と評されていました。グリャズノフさんは第一楽章の表現を特に力説されていました。そのアドバイスは「音楽を止めないこと」。この楽章は多層的なポリフォニック構造となっており、連続する三連符の意味が非常に重要で、曲が遠くから現れて広がっていく絵画的な感覚が大切とのことでした。
レッスンに力が入り、一緒に拍を打つグリャズノフさん。音楽への想いと情熱を感じました。それに応える菅原さんの音楽に統一感が増し、ベートーヴェンの瞑想的な静謐さを感じられるようになりました。この後、グリャズノフさんはテーマの提示部と再現部を続けて弾くように求め、その変化を菅原さん自らが感じることができるようにしていました。再現部でのグリャズノフさんの「ここから新しい呼吸が始まると思ってください」という言葉が印象的でした。公開レッスン②
杉元 太
ベートーヴェン/ピアノソナタ第32番
2番目の受講生は東松島市出身の杉元太さん。現在東京音楽大学大学院在学中で、杉元さんも学ぶかたわら、すでに演奏活動を続けられています。受講曲目はベートーヴェンの最後のピアノソナタ第32番。杉元さんもまずは通しで演奏されました。移り変る表情を工夫した熱演でした。このソナタは2つの楽章という規模ですが、ベートーヴェン晩年の想いが込められた曲ということで、グリャズノフさんの求めるところもより高いものと感じました。まずは冒頭部分の力強さを増すことが要求されました。ピアニストとして弾くのをやめて、チェロやコントラバスを20~30人が力を込めて弾いているように思ってくださいとのコメントに応えた杉元さんの演奏がどんどんダイナミックになっていきます。
その後、グリャズノフさんは第1楽章と第2楽章の間合いのタイミングを計ることを何度も試させました。グリャズノフさんの解釈では第1楽章は現実的な人生を描く、ベートーヴェンの自伝とも言えるもの、第2楽章は人生を哲学的に理解し、その歩みを一つの歌にして坦々と演奏し、最後は希望も絶望もあった人生に感謝して、そのドアを閉めて「さようなら」といって終わるもの。だから二つの楽章の間合いに意味を込めることが何よりも大切だとのことです。これまで私が聴いた公開レッスンで楽章間の間合いをアドバイスした例は初めてでしたが、この曲ではそれも頷けます。また、グリャズノフさんは第2楽章の統一感を維持することも力説されていました。これから杉元さんが様々な人生経験を積まれた後、この曲を再び聴かせてくれることを心から楽しみにしています。
プログラムが全て終了した後、ルフランさんの美味しいケーキが出され、ティータイムとなりました。グリャズノフさんは笑顔を絶やさず、来場者の皆さんや受講生のお二人と歓談されていました。
今年の夏に来仙されたグリャズノフさんにブログチームでインタビューさせていただきました。コンクールでの思い出や寄せる想いを語って頂いています。再掲載しますので、是非ご覧ください。
広報宣伝サポートボランティア 岡





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