第5回仙台国際音楽コンクール優勝者記念リサイタル東京公演まで、いよいよあと1週間を切りました。優勝から1年、リチャード・リンさん、ソヌ・イェゴンさん、2人の演奏がどう進化しているか、耳にするのが待ち遠しい毎日です。
今日と明日、読者の方に優勝者2人の人となりをよりご理解いただくために、過去のインタビュー記事を掲載いたします。今日はまず、リチャード・リンさんの記事をご紹介しましょう。昨年12月6日、日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター)で行われた優勝者記念リサイタルの翌日、英語でインタビューさせていただいた内容です。仙台音楽コンクールボランティア広報紙5-9号(本年1月発行)で掲載されたものの再掲載となります。
リチャード・リンさんの優勝者記念リサイタル東京公演は6月19日(木)、浜離宮朝日ホールで19:00開演となっております。コンクールファイナルで演奏したブラームスを更に探究したいというリチャード・リンさんの願いで、今回はブラームス/ヴァイオリンソナタ全3曲という意欲的なプログラムが組まれています。当日はひとりでも多くの方が会場に足をお運びいただき、リチャード・リンさんを応援していただければ、嬉しく思います。
来日直前の台湾でのコンサートではチャイコフスキーのコンチェルトを1日に2回演奏されたと聞いて驚きました。
自分自身でも1日に2回、同じコンチェルトを演奏するというのは初めての経験で、本当に大変でした。この2つのコンサートは、2つの会社がそれぞれの顧客を対象にして開催したもので、両公演とも会場は満席となりました。皆さんとても情熱的な反応で、演奏を楽しんでいただけたと思います。
仙台国際音楽コンクールの優勝から約半年が過ぎました。仙台のコンクールはリンさんご自身や演奏活動にどのような変化を与えましたか。
コンクールを通して多くの人達に私自身のことを知ってもらい、また、自分の演奏スタイル、自分の解釈も聴いていただくことができました。そして、コンサートやリサイタルなど、いろいろな演奏機会も増え、多くの人達にリチャード・リンという名前を知っていただける良いチャンスとなりました。コンクールによって、自分の人生、自分の音楽というものが成長できたように思います。
ジュリアード音楽院に移られて、3ヶ月かと思います。学習や生活はどう変化しましたか。
カーティス音楽院を卒業してから、新しい先生に就くことになりました。今度のルイス・カプラン先生の指導法は、カーティス音楽院時代の恩師アーロン・ロザンド先生とはかなり違います。ロザンド先生は一緒にヴァイオリンを弾き、ともに音楽を作ることを通して、彼の様式、いわゆるスライドや指使いやボウイングなどの技術を学んでいくものでした。対照的に、カプラン先生はレッスンではほとんど演奏しません。作品や作曲家に関しての話をしたり、いろいろな比喩を使って、その作品の説明をすることによって、私にヒントを与えてくれたり、励ましたりしてくれます。
カーティス音楽院では全員で160人強、大きなファミリーのようなもので、毎日同じ人達と顔を合わせていました。それと比べると、ジュリアード音楽院では在籍する学生の数も多く、毎日新しい人と出会うのです。より多くの音楽家と接することができ、また自分をより多くの人達に知ってもらう場でもあります。まだまだ新しい生活に慣れている最中ですね。
ジュリアード音楽院からは仙台のコンクールに多くの学生の方が出場してくれています。ジュリアードに移られてから、仙台のコンクールのことが話題になったことがありますか。
はい!特に韓国の方がこの仙台のコンクールのことを良く知っていて、入学した時からすぐ「あの仙台のコンクールで優勝したリチャード・リン」と言われました。
では昨晩のリサイタルについてお伺いします。今回、全てのプログラムをご自身で選ばれたそうですね。選曲した理由やその曲に寄せる想いをお聞かせください。
(注:プログラム内容 ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第1番/グリーグ ヴァイオリンソナタ第3番/サラサーテ スペイン舞曲集と「ツィゴイネルワイゼン」/アンコール 「花は咲く」、「出外人」(蕭泰然)、「浜辺の歌」)
まず、プログラムそのものですが、全部自分で考えたのは今回が最初です。ロザンド先生の考えに基づいて最初に聴きやすい曲から入っていって、そこからテンションを上げて後半ではエキサイティングで派手な曲を持ってくるように構成しました。それで、ベートーヴェンのソナタをプログラムの最初にしてみました。この第1番は大好きなのですが、大勢の聴衆の前で弾くのは今回が初めてでした。特に好きなのは第2楽章です。これはベートーヴェンが書いた10曲のソナタのうちで、もっとも綺麗な楽章ではないでしょうか。今まで、3番、5番、7番は演奏会で弾いたことがあったのですが、今回はこの1番を是非弾きたいという強い気持があったのです。
グリーグですが、この曲を初めて耳にしたのはハイフェッツの録音でした。そのスタイル、スライドや音色がすごく好きだったので、決して物まねをするというのではなく、その素晴らしいところを取り入れたいと思いました。
後半の舞曲ですが、ロザンド先生のレコーディングがありまして、それがとても素敵なのです。その中で、最も自分が気に入ったものを何曲か選ばせてもらいました。アンコールは、日本の曲も入れたいと思い、コンクール事務局のスタッフに相談しました。「花は咲く」を提案してもらい、YouTubeを通して、いろいろな録音を聴きました。多くの有名人が歌っていますし、そのストーリーもとても感動的だったので、アンコールの最初の曲によいのではないかと思いました。
2番目の台湾の曲は自分で選びました。この曲を作った蕭泰然という作曲家はヴァイオリンとピアノのための音楽を沢山作り、楽譜も出版されています。台湾では非常に人気があり、小品で技術的にもそれほど難しくないので、多くの人がコンサートで演奏しています。彼は台湾で非常に尊敬されていて、今はロサンゼルスに住んでいます。また、ヴァイオリンやピアノのためのコンチェルトを台湾で最初に書いた人であり、今では台湾以外の国でも演奏されています。今回のリサイタルを機会に、私の故郷の音楽を少しでも日本の皆様に知ってもらえればと思いました。彼は地元では「台湾のラフマニノフ」と呼ばれています。彼のピアノコンチェルトを聴けば、きっとラフマニノフを連想しますよ(笑)。その中に少し台湾スタイルが入っているのです。
昨晩のリサイタルは私も客席で感激して聴きました。演奏されての感想はいかがでしたか。
コンクール以後、仙台では演奏していなかったので、昨日は私にとって特別なリサイタルでした。この仙台という街そのものも自分が訪れたことのある街の中で最も素敵な街だと思います。人々や食べ物や雰囲気も・・・。昨夜もリサイタルの準備は万全でしたし、聴衆の皆様の反応もとても温かかったと思います。誰一人として楽章の間で拍手する人がいなかったので、感激しました。本当に楽しかったです。
仙台の聴衆の反応をどう感じられましたか。
今回の来日期間は短かったですが、どんな楽しみがありましたか。
初日から皆様が自分と弟(共演のために同行したロバート・リンさん)の滞在をケアしてくれて、本当に助かりました。コンクールの時に遊びに行ったいろいろな所に、弟を連れていきました。もちろん自分が一番好きだった牛タン店にも!ゲームセンターにも行って、UFOキャッチャーでお土産をしっかりゲットしました(笑)。短かったのですが、本当にいい滞在になったと思います。
弟さんとの共演は息がぴったりだったと会場では好評でした。
小さい頃から一緒に練習してきました。弟は6歳の時にピアノを始めたのですが、父が二人を一緒に見守れるように、異なる曲でも同じ部屋で練習していました。一つの曲を二人で演奏するようになったのは私が11歳の頃からです。これは台湾でのコンクールに出場するためで、その時に弟が伴奏してくれたのです。共演を始めてから、もう10年以上になりますね。
コンクールの時や今回のリサイタルで、仙台の多くの女性が貴方の演奏する姿やヴァイオリンの音色にしびれたと話しています。彼女たちが貴方の好きな女性のタイプを知りたがっていますが。
今後演奏活動と並行して、コンクールへの挑戦を続けていきたいとお聞きしました。コンクールを受け続ける目的とこれからの目標をお聞かせください。
コンクールに挑戦するということは、新しいレパートリーを身につける良い機会でもあります。新しい音楽を自分でとことん探求することができますし、音楽のいろいろな側面を発見することができます。また、コンクールというのは非常に厳しい環境でもあるので、プレッシャーのかかる状況の中で自分を鍛えることもできます。コンクールを通じて、世界のより多くの人達に自分のことを知ってもらいたいですね。
最後に仙台のファンへのメッセージをお願いします。
仙台の皆様にはコンクールの間、そしてその後も応援していただきとても感謝しております。今回は、この仙台のホールで演奏することを本当に楽しませていただきました。また、2014年6月には東京でも優勝記念リサイタルが開催されます。それに合わせて、仙台でCDの制作が企画されており、東京のリサイタルでも演奏するブラームスのソナタとスケルツォを収録する予定です。コンクールでは、ファイナルでブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏しました。それがきっかけで、もっとブラームスを掘り下げて取り組みたいという気持ちが強くなりました。今度のレコーディングでも、ピアノを担当するのは弟のロバートです。このCDで皆様に私の音楽を聴いて楽しんで頂ければ嬉しいですね。そして、また仙台に戻って来れることを心から楽しみにしています。
この日のうちに台湾に旅立つという慌ただしい中、ていねいに質問に答えていただいたリチャード・リンさん、本当にありがとうございました。
広報宣伝サポートボランティア 岡



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