2025年3月4日火曜日

友滝真由さん出演のピアノトリオ・コンサート レポート



2025年2月27日、東京都千代田区の紀尾井ホールで行われた、ピアノトリオ「トリオ・エクス」によるコンサートを聴いてきました。トリオ・エクスはベルリン留学を機に2022年、新しく結成された新生トリオです。そして、ヴァイオリンを担当しているのは、第7回仙台国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で3位(この回は1位なし)を受賞した、友滝真由さんです。友滝さんは第1回オデッサ国際コンクール第1位、全日本学生音楽コンクール大阪大会第1位など、国内外のコンクールで入賞を重ねてきました。仙台でのファイナルで、スケール感があるブラームスの協奏曲の演奏をおぼえている方もおられると思います。現在はベルリン・ドイツ交響楽団に所属されています。トリオ・エクスは友滝さんがベルリン留学を機に留学仲間のリード希亜奈さん(ピアノ)、藤原秀章さん(チェロ)と3人で結成したトリオです。結成半年後にリヨン国際音楽コンクールで第3位に入賞するなど、着実に実績を重ねています。3人はすでに演奏活動で活躍中ですが、トリオとしては今回の紀尾井ホールが本格的な日本デビューとなりました。私は紀尾井ホールでコンサートを聴くのは2回目でしたが、木の風合いを生かした美しい内装の中、素晴らしい響きを堪能することができました。

紀尾井 明日への扉
第42回 トリオ・エクス(ピアノ三重奏)

【日時】2025年2月27日(木) 開演:19:00~

【出演者】
トリオ・エクス(ピアノ三重奏)
 リード希亜奈(ピアノ)
 友滝真由(ヴァイオリン)
 藤原秀章(チェロ)

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番ハ短調 op.66
レベッカ・クラーク:ピアノ三重奏曲
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調 op.8(1889年改訂版)
アンコール/メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 第2楽章

まずは、プログラム中のトリオ・エクスさんの「ご挨拶」から、この日の演奏に寄せるコメントの部分を引用します。

私たちが目指す音楽の在り方は、お互いに対話し、その瞬間を共に楽しむことにあります。本日の演奏を通じて、その喜びを皆様と分かち合うことができましたら幸いです。本日は、メンデルスゾーン、クラーク、ブラームスの作品を演奏いたします。私たちが暮らすドイツの代表的な作曲家であるメンデルスゾーンとブラームスの情熱的で詩的な響きに加え、イギリスの女性作曲家、レベッカ・クラークのピアノ・トリオの魅力も存分に味わっていただければと思います。豊かな個性を持つ三つの作品をご堪能ください。

この日は性格の異なる3曲のピアノ三重奏曲が演奏されました。まずは、メンデルスゾーンの第2番で、溌剌とした美しい旋律を持つ、各楽章が個性にあふれた曲でした。美しいアンダンテの第2楽章とコラールを奏でながら劇的に終わる終楽章が特に印象的でした。3人は洋裁で一針一針糸を縫い合わせるように、曲の中のつなぎ目に差し掛かる度に呼吸を合わせて、美しい旋律を紡いでいきました。一人が突出することなく、3人がお互いを尊重しながら丁寧な音楽づくりをされていたので、「間」がとても美しく感じました。

続いて、レベッカ・クラークのピアノ三重奏曲が演奏されました。初めて聴く作曲家でしたが、調べてみると、女性作曲家に対する偏見があった時代に生き、後半生は断筆せざるを得ないという、時代に苦しめられた人だったようです。このピアノ三重奏曲はドビュッシーとバルトークを足して、物々しさと不穏さで味付けされたような曲で、聴いていて少々緊張しましたが、興味深く鑑賞しました。3人は硬質な音色で緊迫しながら、刻々と様相が変化する曲の特徴をよく伝えてくれました。

休憩をはさみ、最後はブラームスのピアノ三重奏曲第1番でした。今回はブラームスが発表35年後に自身で改訂した版が演奏されました。有名な第1楽章の冒頭から、はやり丁寧に旋律が紡がれて、最後まで心地よく音楽に浸ることができました。また、全楽章を通して若々しいブラームスで、冒頭からフィナーレまで爽やかさが一貫していて、アンコールも含めて、心地よく、清々しい気持ちで聴き終えました。


ベルリンで活躍中の友滝さん。ソロやオーケストラとの共演もまた日本でぜひ聴かせてください!

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