ピアノ部門、記者会見の後半、質疑応答の部分をご紹介いたします。この日の質疑応答の内容も、審査の根源に関わる、とても興味深い内容だと感じました。皆様にも楽しんでいただけたら、嬉しく思います。では、以下ご報告いたします。
(なお、回答者の敬称を省略させていただいております)
Q: 課題曲について、うかがいます。ファイナルのモーツァルトですが、第20番以前の協奏曲5曲からの選択とされた理由、そしてファイナルで2曲弾くに当たって、2人ずつグループにしてモーツァルトの時とロマン派以降のものを交互に配置された理由をお聞かせください?
Q: シャオユー・リュウさんにうががいます。リュウさんは19歳ですが、セミファイナルの時からオーケストラとのやりとりが手慣れているというか、堂に入っているようにお見受けしました。オーケストラとの共演経験は豊富なのですか?
シャオユー・リュウ(以下リュウ): そうですね。沢山とは言い難いかもしれませんが・・・。そうは言いながらもこれだけ内容のある3曲のコンチェルトをこれだけの短い期間に演奏するというのは、私にとっては初めての事です。本当に良い経験になったと思います。こういう経験をさせてもらうということは、おそらくこの仙台のコンクールの場ならではのことと感謝しております。ラフマニノフの協奏曲は私が通っている音楽学校のオーケストラ(ユース)で演奏したことがあります。
Q: ファイナリストの皆さんにうかがいます。なぜ仙台のコンクールを受けたのかをお答えください?
キム・ヒョンジュン(以下キム): 選びました理由は、このコンクールがとてもユニークで、異なる3つの協奏曲を演奏できるということです。それも続けて。私にとって、モーツァルトの早い時期のコンチェルトを学び、大きなコンチェルトも弾けるという、素晴らしい体験の機会になるのではないかと考えました。
エヴァン・ウォン(以下ウォン): 他のコンテスタントも同様だと思うのですが、やはりオーケストラと実際に共演できるチャンスということが大きな魅力でした。そして、個人的には実際にそこで学べることが多いのではないか、特に練習の時にはオーケストラ譜を第二ピアノと共演する形で勉強する訳ですが、それを実際のオーケストラと演奏することで、レパートリーに関して大変多くのものを学ぶことができる。実際にオーケストラとの共演ということが、大きなポイントの一つでした。そして、更に審査委員の方々が全て私達が尊敬してやまないピアニストであり、その前で演奏できるということ、そしてそのコメントを頂けるということも大きな魅力でした。
北端祥人(以下北端): 先のお二人がおっしゃったように、とても良い経験になると言う事です。オーケストラと1週間の中にこんなに沢山共演できるということはなかなかなく、それを通して自分が成長できるのではないかと思いましたのが一つです。そして、審査委員の方々が本当に素晴らしい音楽家の方々なので、その前で演奏できるということだけでも、素晴らしいチャンスだと思いました。あと、私は日本人ですので、日本でのコンクールで何か賞をとって、演奏できる機会が沢山広がればいいなと思い、受けることにしました。
リュウ: 私も皆さんと同じように、オーケストラと演奏できるというのが選んだ決定的な理由です。3曲も弾けるということで、それ以上に何も言う事はありません。でも敢えて言いますと、今回日本に初めて来ました。もともと日本の文化、そしてどの様な場所かということに興味がありましたが、実際に来てみて更に日本の文化に心が捕えられました。最後に付け加えると、このコンクールの運営面ですね。担当の方々、本当に時間厳守で見事な運営だったということ、そういう意味でも日本の国柄に強く心を打たれました。ありがとうございます。
シン・ツァンヨン(以下シン): 日本は韓国から近いということもありますが、私にとってとても良い経験になると思いました。そして、非常に短い期間に3曲の協奏曲を演奏できることはとてもやりがいのある挑戦だということで、この仙台を選びました。
坂本彩(以下坂本): 皆さんおっしゃった通り、3曲の協奏曲が演奏できる。それがオーケストラと実際演奏できるという事が大きな理由の一つです。あと、私も日本人として、東京の後、ベルリンで勉強して5年になります。久し振りに日本に帰ってきて、日本のお客様の前で演奏して、どのような聴衆の反応を頂けるか・・・、そして結果ではなくて、どのように自分ができるかなということを試してみたいと思ったことも一つです。あと、コンクール期間中、敬愛する素晴らしいピアニストであり教育者でもある名立たる先生方の前で弾かせていただいたということは、本当に今でも信じられないことでした。それもコンクールを選んだ理由の一つです。
Q: 野島先生におうかがいします。キムさんが1位に決まった一番の大きな理由・要素をお聞かせください。キムさんの演奏の魅力ということでもOKです。
野島: これは個人的で審査委員を代表する意見ではありませんが、各ラウンドその演奏だけを採点するということにはなっておりますが、やはり我々コンクールを通して、そのピアニストがどの曲でどの程度安定した実力(を発揮できる)ということが、演奏家に求められる非常に大きな要素であります。各審査委員が皆、想像力を働かせて、この人はこれから数年先、10年先どうなるんだろうということ、すなわち将来性(も併せて聴く)ということも大事です。(もちろん)各審査委員にとって一人一人違うところがあります。だから、色々な国から素晴らしい音楽家達が様々な視点から見て下さるという、国際コンクールの良さがあるので、非常に面白くエキサイティングなものになる訳です。私の個人的な観点からは、全てのラウンドで彼女は非常に安定した実力、技術(があり)、音楽のバランスが取れていたと思います。、
Q: ベートーヴェンのコンチェルト、第3番と第4番を課題曲に充てられた理由をお聞かせください。
野島: これも実は植田先生の(アイディアで)・・・(笑)。やはりベートーヴェンというのはどうしても弾けなければなりません。そして、第3番と第4番というのはそれぞれ、我々にとって宝物のようなコンチェルトです。それぞれのピアニストにとって、もちろん向き、不向きがあります。第3番と第4番は非常に性格が異なりますね。自分の体質に合ったといいますか、自分が今もっとも感じる曲を選ぶことができるか。第3番と第4番は、それほど性格が違いますので。それで私は即座にそれ(植田先生の発案)に賛成した次第です。
植田: 前回、モールァルトの第20番以降とベートーヴェンの第1番と第2番という、もしかしたらモーツァルトのスタイルに近いのではないかというベートーヴェンのコンチェルトを取り上げました。今度はコンチェルトを3曲にしようとなった上で、どの分野でどう弾くのか、どの段階でどう弾くのかということで相当頭を悩ませました。私がベートーヴェンを2曲(提案したのは)、長さや編成的にも大体近く、同じ作曲家に対して全然違う面からアプローチできるということ、そしてどのコンチェルトにも言えることですが、自分のパートだけではなくて、スコアとして作品をどの様にとらえられるかといった時、ベートーヴェンの持っている力というものが大変に大きくなります。そして、それと全然違った意味でモーツァルトの中期といってよいのでしょうか、第15番から第19番のスコアの読み方は全然異なってきます。シンフォニーの作家としてのベートーヴェン、ピアノストとしてのベートーヴェンの融合された形をどのように若い人達が挑んでくれるかを聴きたいと思って、一つの提案として野島先生に申し上げました。モーツァルトも先程言ったように、全然違うスタイルですが、どのようなことを鳴らしてくるのか、譜面から読み取ってくれるのか、オーケストラと一体化してもらえるのかということを聴きたいと思って、申し上げました。
ヴィルサラーゼ: 私も野島先生、植田先生のおっしゃっていることに全く賛同いたします。本当にどの曲も素晴らしいコンチェルトですね。そして、何回聴いても飽きない協奏曲だと思います。特にベートーヴェンの第3番と第4番につきましては、本当に難しいコンチェルトということを今回改めて感じましたし、若いアーティスト達がこの難曲にどのように挑んでいくかということを聴くのは非常に面白いプロセスでもありました。
Q: コンテスタントの皆さん、今回のモーツァルトのコンチェルトを今まで演奏されたことはありますか?
キム: これまでほとんどモーツァルトのピアノ協奏曲は弾いたことはありませんでした。晩年の1作品のみでした。今回ヘ長調の作品を演奏したのですが、選んだ理由はそのキャラクターと申しましょうか、とても可愛い、チャーミングな作品という印象を持ったからです。それが演奏できたらいいなと思いましたが、やればやるほどこの作品の難しさ、後期の作品よりもっと難しいということを知ることができました。
ウォン: 私はト長調の作品を選びました。必ずしも初期の作品とは言えないかも知れませんが、よく演奏される作品でもないということも同時に言えます。私はたまたま前に弾いている人を聴く機会がありまして、この曲がいいかもしれないと思ったのがきっかけです。そして、実際とても面白い素晴らしい作品だと思い、それを今回演奏させていただきました。
北端: 今回選んだ第19番のヘ長調のコンチェルトは、私がちゃんと全楽章勉強した初めてのモーツァルトのコンチェルトでした。この曲に出会えたことを本当に嬉しく思います。やはり第20番以降のコンチェルトの演奏機会というのは圧倒的に多くて、どうしてもコンサートなどで先に第20番以降のコンチェルトを知るのですが、私はこのコンチェルトを、とあるマスタークラスで韓国人のピアニストが弾いているのを初めてそこで聴いて、こんなに素晴らしい曲があるんだと。5年前位ですが、その時から弾きたいコンチェルトでした。ある意味で第20番以降とは違ったキャラクターで、どのようにそのキャラクターを捕えるのかというところが非常に難しいところでした。
リュウ: 第20番以前ということで、作品番号の若いモーツァルトの協奏曲をやるのは私にとって初めてということで、選んだ曲も初めてです。選んだ曲は第19番のヘ長調で第1楽章だけは、すこし若い時に勉強したことがありました。今回選択すると言う事で、かなり表現など深めていこうと勉強してきました。そしてもうひとつ気付いたことですが、今私は19歳で19番の協奏曲なので、この曲が弾けて良かったかなと・・・すこしこじつけですが(笑)。慣らしていくにつれて、自分に向いた曲かなと思いましたので、今後も学び続けて、自分のものとして良い表現ができるようにしていきたいと思います。
シン: 一体どれを弾こうかと最初迷ったのですが、実はコンサートに行ってト長調の曲を聴いて、非常に魅力的だったもので、自分も弾いてみたいということで選びました。
坂本: モーツァルトのコンチェルトは5つ課題曲がありましたが、その中で勉強した曲は一つもなくて、どうやって選ぼうかなとなった時に、音源を並べて、もうとにかく私は直感で選びました。調性とか拍子感とか、音楽を聴いてどのようなものをイメージできるか・・・。直感で感じたことなら、その先深めていく段階において、きっと何かが繋がる気がしたので、迷わずK.456を弾かせていただきました。
Q: 海老澤先生にうかがいます。今回若い演奏家の若いモーツァルトのコンチェルトを楽しく拝聴しました。モーツァルトの権威である海老澤先生はどのような印象を持たれましたか?
海老澤: これらの曲は初期ではなく、中期といってよいですね。ザルツブルグでもいっぱい書いていますから。皆さんは、K.460以降は知っておられるでしょうが、K.459までの6曲というのはモーツァルトがウィーンにいってからしばらくして、一番忙しい時期に書いたんですね。1784年、まだ4年目ですね。ものすごく忙しい時に、自分のためというよりも、教え子やウィーンでピアノをやっている女性などのために書いたもので、今ではあまり弾かれません。そのようなことに注目されたと思いますが、皆さん初めてにしては良く弾くなという感じです。だた、今回は現代ピアノですね。私は聴きながら、皆さんがモーツァルトの時代のフォルテピアノをどの位知っているかなと(思っていました)。弾いたことがある人はいますか?(3人挙手)。自分でフォルテピアノの演奏家になろうとか、そのようなことは関係なしに、今のピアノで弾く時もモーツァルトの時代、つまり3世紀前の18世紀の響きを体感して欲しいなと・・・。先生方もあまり弾いてないでしょう・・・やっぱり(笑)。知っているんですよ。この世代の方々はほとんど弾いていない。バッハの時代からフォルテピアノはありますし、チェンバロもそうですが、それぞれの時代の音楽の響きを一応知って、経験して(欲しいです)。今回の課題曲はモーツァルトがウィーンに行ってから最初に書いた3曲とはまた違って、モーツァルトはワルター製の自分のフォルテピアノを注文して、買って使っていた訳ですから、専門家になる必要はありませんが、そういう音を知っていることが必要ではないかと思いました。皆さん良く弾くなと思うと同時に、是非モーツァルトの時代の響きを知ってほしいという想いで聴いていました。
Q: ここで少し砕けた質問を。ファイナリストの皆さん、今なにが一番したいですか?
キム: まずたっぷり寝たいと思います(笑)。それから父に会いたいですね。母は今回私と一緒に来てくれましたので。そして、もう少し仙台の街を見たいと思います。実際今日までは練習の毎日でしたので、明日はお出かけしてショッピングをして、和食も大好きなので食事ができたらと思っています。
ウォン: 私もまた、たっぷり寝たいと思います。というのも演奏の後はなかなか寝付けないもので、睡眠が足りなくてかなり疲れていますので、たっぷり寝たいです。
北端: 私は出身が大阪なのですが、明日(ガラコンサート)が終わったらひとまず大阪に帰って、家族に報告して、7月1日にはもう今勉強しているベルリンに帰ります。今のベルリンの季節は天気が良く湿気が少なくて、本当に素晴らしいです。なので、一緒にベルリンで勉強している坂本彩さんや友人たちと盛大にバーベキューをしたいと思っています(笑)。
リュウ: 私もカナダに戻ります。大変遠いところですので、時差ぼけもあると思います。それを取り戻すことが必要になるでしょう。でも、その前に日本にもう少し滞在して、京都に行きたいなと思っています。とても歴史的に意味のある街ということで興味があります。それとは別に今回仙台で過ごせたこと、自分にとって良い経験だったと思います。美味しいものも沢山食べることができました。練習があったので、ホテルの周りを少し歩いただけで、沢山散歩はできませんでしたが、これからもう少し仙台を歩けたらなと思っております。
シン: 今は家に帰りたいですね。帰ってパーティをして、お酒を楽しんで・・・。その前に東京に行って、友人と会って、ショッピングもしたいと思います。韓国に帰ったら、いろいろ飲んだり、食べたり、バーベキューを楽しんだり・・・、練習の方も2~3日お休みしたいなと。
坂本: 皆さんと同じで、飲んだり、食べたり、騒いだり・・・・。皆さんバーベキューとおっしゃっていましたね。北端君達と一緒にベルリンで勉強していますが、去年皆で持っていたバーベキューセットをなくしてしまって、皆でお金を出し合って買ったバーベキューセットが1セットあります。それをフル活用して、まずは精神的にリラックスして遊びたいなと・・・。時差のある中配信を聴いてくださり、いつも支えてくださる私のベルリンの先生方に、今回の感想やこれからのことなどゆっくりお話したいと思います。
Q: 審査委員の諸先生におうかがいします。音楽の作品の本質的理解を問う、素晴らしい内容のコンクールだと思います。違う様式感のコンチェルトを3曲弾くということはとても大変だと思いますし、作品の理解、技術、そしてそれを実現するバランス、安定感もあると思います。それと同時にオーケストラとの共演という経験値やコミュニケーション能力も問われたと思います。野島先生もおっしゃった将来性というところと今現実にできていることをどの様にバランスよく審査の中で評価しているかをお聞かせください。
野島: このような若い人たちを前にしますと、自分が若かった時をどうしても思い出します。オーケストラと最初にやった時など。それに重ね合わせまして聴いている訳ですが、一回本番をするとコンチェルトというものは本当に違って参ります。ただリハーサルではなくて、聴衆の前でコンサートで弾く、これは非常に大きな経験です。その時我々が聴くのは、経験値が少ないことにより音楽がいまひとつ説得力がなかったのか、そういうことも考慮して、次に弾いた時はどのように良くなっているかということですね。挨拶でも申し上げましたが、経験というのは非常の大きいです。たとえば、同じP(ピアノ)と書かれていても、ソロで弾くP(ピアノ)とコンチェルトで弾くP(ピアノ)は違う訳ですね。編成によっても違いますし。そのようなことを全部重ね合わせるというか、自分の中でこの方達が経験を積んだ時にどうのような演奏をするかということを一所懸命想像しながら聴いております。
植田: オーケストラと一緒に演奏するということはソリストとしての気構えが大事なのはもちろんなのですが、先程申し上げたように、オーケストラとのコンタクトをどの様に取るのか、ある意味アンサンブルでもあるけれども、また室内楽のアンサンブルともまた違います。いろいろな楽器とやりとりをする訳ですから、弦楽器、木管楽器、金管楽器も含めて、時にはティンパニとも・・・。その時に自分はどういう音を出して、オーケストラの人と音でコンタクトを持つのかということ。それから呼吸感、呼吸(ブレス)の感覚というのはピアノのソロとオーケストラとでは全然違いますから。そこらも含めて、指揮者とどのようにコンタクトを取るのかというのは、彼等がこれからソリストとしてずっと活動を続ける場合にどうしても身につけなければならないことです。そういうことを若いうちから沢山経験を積んでもらいたいということ。仮にまだそこまで十分にうまくいかなくても、先程の野島先生のお話しではないですが、1回経験することによって、この次の時に、ではどうしようかということが身に備わっていくという力が彼等には必要ですし、我々も経験上、そういう耳から聴いていたのではという気がいたします。
ヴィルサラーゼ: オーケストラとの共演をいかにするべきかということを語り出すと24時間以上かかると思います(笑)。という訳で24時間語りたいところなのですが、それは控えさせていただきますとして、私達現役ピアニストはこれまで多くの時間をステージに費やして参りました。そんな私達でさえ、オーケストラとの共演は毎回新しい経験なのですね。その新しい経験を積むと言う事は、たぶんピアノを弾き終える私達の最後の日々まで続くと思います。言ってみれば、終わりのない経験です。そういう意味では昨日弾いたコンチェルトを今日弾いてみると全く違うコンチェルトになっていたりするという非常に面白い発見と可能性の連続です。そういう意味でオーケストラとの共演は私にとって奇跡の現象とも言えましょう。とても面白い経験ですし、毎回発見があるということで、本当にやめられない経験なのです。
事務局: 以上をもちまして、記者会見を終了させていただきます(拍手)。
とうとうコンクールの全てが終了してしまいました。まだ、関連事業のレポート等もありますが、この記事で私のコンクールもひと段落。私もたっぷり寝たいです!
広報宣伝サポートボランティア 岡










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