聴衆と出演者の想いがひとつになった日
5月7日(土)、東京の文京シビックホールで仙台国際音楽コンクール出場経験のあるピアニスト5人による「チャリティーコンサート for 仙台 Vol.6」が開催され、聴いてきました。東日本大震災直後の2011年4月にスタートしたこのコンサートも今回で6回目。これまで毎年開催され、第1~4回目まではコンサート収益の全額を被災地の仙台市に寄付頂き、前回第5回目からは被災した子供たちを支える施設「子どもの村東北」を新たに寄付先に加え、仙台の復興に大きく寄与しながら進化を遂げてきました。この日は、仙台を常に忘れず心を寄せていただいているピアニストの皆さんに感謝しつつ、渾身の演奏を楽しませていただきました。
第6回チャリティーコンサート for 仙台
震災から5年~
今聴きたい入魂の一曲
~Charity Concert for Sendai vol.6~
演奏予定曲目:
バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ (米津 真浩)
ベートーヴェン/ピアノソナタ 第23番「熱情」 (佐野 隆哉)
ブラームス/4つの小品 作品119 (法貴 彩子)
メンデルスゾーン/無言歌集より6曲 (津田 裕也)
ラフマニノフ/コレルリの主題による変奏曲 (鈴木 美紗)
まずは、このコンサートの収益金の寄付先の一つである「特定非営利活動法人子どもの村東北」の常務理事岩城利充さん(公立黒川病院小児科科長)より挨拶がありました。その内容を要約してご紹介しましょう。
「子どもの村東北」は東日本大震災をきっかけにして設立されました。震災から、もう5年になります。あの時の津波やその他の災害で1900人(宮城県900人)の片親を亡くした遺児、241人(宮城県135人)の両親を亡くした孤児が出ました。「子どもの村東北」は2012年の6月に震災孤児や両親と暮らせない子どもたちを育てる場所として計画され、2年間の準備期間を経て2014年の12月に仙台市茂庭台に開設されました。現在、3人の里親さんのもとで、5人の子供たちが元気に育っています。施設内には「家族の家」が3棟建っておりますが、予算がつき次第、あと2棟の建設が予定されています。この施設の利点は「里親制度」と「専門家がいる施設による養育」の良いところを兼ね備えているところです。1949年にオーストリアで生まれた「子どもの村」は現在134ヶ国に広がりました。日本では133番目に設立されました。「子どもの村東北」の理事長は震災当時石巻日赤病院の院長として奮闘していた先生です。理事には当時児童相談所長をされていた方や宮城県の児童養護関係者もおります。規定により、無報酬で勤めています。皆様のご支援を頂ける場合は、すべて「子どもの村東北」の建設、運営資金に使わせていただきます。子どもたちが長く、元気に育つためのご支援を引き続き頂ければありがたいと思います。
さて、公演内容ですが、出演した5人のピアニストの皆さんがそれぞれ「入魂の1曲」を選んで演奏するという、とても贅沢なプログラムが組まれました。プログラムに寄せて」と題した出演者からのメッセージの中から出演者の想いが記されている部分をご紹介した後、私の感想を書いてみます。
米津真浩さん
「魂」の叫びのような壮大な音楽を、祈りを込めて演奏したいです。
米津さんのバッハは迫力があり、ロマンティック。感興のおもむくままにテンポを微妙に動かし、情熱的な「シャコンヌ」を聴かせていただきました。クライマックスでの押し寄せる波のような音の数々に、会場は一気にコンサートに集中する雰囲気に引き込まれました。
佐野隆哉さん
ベートーヴェンが不屈の精神で難聴という壁を越えたように、東北、熊本、そして日本全体が困難に立ち向かい、新しい未来を切り開いていけるように...そんな願いを込めて、この「熱情」ソナタを演奏したいと思います。
これまでの演奏を聴いていて、佐野さんのベートーヴェンをいつか聴きたいと思っていました。この日の演奏はそんな期待に100%応えてくれました。佐野さんの特徴である「骨太かつ繊細」な演奏は「熱情」ソナタにはピッタリでした。整然とした構成感の中にロマンティックな奔放感がある、一見矛盾した要素が同居しているのが佐野さんの魅力です。コントロールされた力強さを満喫させていただきました。
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| 休憩時間に募金活動をする米津さん、佐野さん |
法貴彩子さん
地震などの自然災害はきっとこれからもたくさん起こるのでしょう。不安な気持ちはありますが、それぞれが今出来ることをしていけたらと思います。
法貴さんのピアノの魅力を言葉にするのは難しいのですが、細部を聴いていても全体を意識させる演奏と言ったらよいでしょうか。その特徴がブラームスにはちょうど良いように思いました。ブラームス晩年の作品にみられる人生を振り返るような懐かしさを十分なスケールで楽しませてくれました。息の長い呼吸感と不思議な浮遊感のある法貴さんのピアノに、しばし酔わされました。
津田裕也さん
メンデルスゾーンの音楽は人を驚かせる圧倒的な華やかさはありませんが、さり気ないメロディーとハーモニーににじみ出る静かな美しさに心を打たれます。6曲の様々な世界をお楽しみいただけると幸いです。私なりの思いと祈りを込めて演奏させていただきます。
いつも清潔感のある真摯な演奏が津田さんの魅力ですが、それに加えて、力強さや堅固な構成力も感じたこの日のメンデルスゾーンでした。ところどころに散りばめられた、さり気ない飾り気が美しさを感じさせる表現にも心を打たれました。一見カジュアルで普通に見えるけれど、一針一針丁寧に仕上げられた洋服のような津田さんのピアノ。毎回、新しい一面を見せてくれる演奏に、これからも目が離せません。
鈴木美紗さん
錚々たる素晴らしいピアニストメンバーのトリを務めるのが恐縮な限りですが、大好きな作品を弾ける喜びをかみしめながら、被災地の方々へ届くよう、心を込めて弾きたいと思います。
この日最後のプログラム。コレルリ「ラ・フォリア」の有名なテーマが次々と変化していく、多彩で様々な感情が込められた素晴らしい曲を堪能しました。人を幸せな気持ちにさせる、微笑みの演奏というのがこれまでの鈴木さんへの印象だったのですが、この日は良い意味でそれが裏切られました。もちろんその特徴はそのままなのですが、それを超えるような「私はこうしたい」という固い芯が全曲に貫かれていて、ピアノから手が離れた時、これまでになかった大きな聴き応えを覚えました。
アンコールの前に鈴木美紗さんからご挨拶がありました。
皆様、本日はお忙しいなか、お越しいただき、ありがとうございました。2011年から始まったチャリティーコンサート for 仙台も今年で6回目となりまして、この会場で弾くのも3回目です。去年から、会場にも掲示でご紹介している「子どもの村東北」と仙台市に折半で寄付となっておりまして、今年も同様とさせていただきます。先日、熊本で地震があったこともあり、何かできないかと思い、急遽募金箱を設置させていただきました。私達にできることは限られていますが、できる時にできる事をやっていきたいという想いがあります。ロビーで終演後、出演者が募金を募りますので、もしよろしければご協力いただければ幸いです。お願いいたします。
次に法貴彩子さんから、アンコール曲の説明がありました。
今年は5人出演しましたので、5人で1台のピアノを弾きたいと思います。楽譜をいろいろ探したのですが、なかなか見つからず、連弾の曲で皆様よくご存じの「故郷」をバッハの舞曲風にアレンジしてアンコールといたします。最初はテーマで始まりますが、続いてメヌエット、クーラント、サラバンド、ジーグ、最後はガボットで終わります。5人が両手で弾くとスペースがないので(笑)、片手ずつ弾きます。お楽しみください!
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| 「5人による5手」のピアノを聴いたのは初めてでした。感激です。 |
出演者の皆さんの想いがこもった演奏が聴衆に伝わり、会場が一体となった2時間でした。こんな温かい時間を毎年味わえる幸せを大切に、これからもこのコンサートをフォローしていきたいと思います。なお、チャリティーコンサートの実行委員会から、この日の収益金と募金をもとに、仙台市へ115,448円、「子どもの村東北」へ115,448円が寄付されることが報告されました。そして今回特設された熊本地震への募金箱にも23,802円が集まり、すべて熊本県へ寄付されるとのことです。
Charity Concert for Sendai 実行委員会公式ブログ
広報宣伝サポートボランティア 岡



募金額がちと違うかな?万円と円の使い分けをお願いします。
返信削除akirasnd様
削除コメントありがとうございます。ご指摘、感謝いたします。
さっそく訂正いたしました。これからもご愛読ください。
取り急ぎ、御礼まで。
仙台国際音楽コンクール ブログチームより