2015年1月15日木曜日

パスカル・ヴェロによる指揮講習会


自分にしか分からない表現方法ではメッセージは伝わりません!


1月12日(月・祝)、東京エレクトロンホール宮城で行われた、仙台フィル常任指揮者パスカル・ヴェロさんによる指揮の講習会を聴講してきました。日比野裕幸先生(元仙台フィルクラリネット奏者)が率いる宮城教育大学交響楽団を中心とするオーケストラを前にして、午前10時から午後6時までの長丁場、合計20人の受講生が一人17分ずつ、自身で指揮をしつつヴェロさんにレッスンをつけてもらっていました。この日の受講生は音楽専攻の大学生、アマチュアオーケストラを指導している人、高校や大学の先生、ブラスバンドで楽器を担当している人など様々でした。この日の課題曲はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。誰もが知っているこの曲の意外な面白さ、深さや難しさを知った一日でした。

パスカル・ヴェロによる指揮者大解剖!?
  ~パスカル・ヴェロによる指揮講習会~
 
指揮者とオーケストラを裏の裏まで・・・・
 
音楽に対して妥協を知らないヴェロさんなので、20人の受講生にとって17分はかなり長い時間だったと思います。ヴェロさんは曲の性格、解釈からオーケストラに立ち向かう精神的、物理的姿勢、指揮棒のテクニックまで、受講生のレベルに合わせて熱心に時には語り、時にはやって見せ、「指揮」という仕事の大変さや真髄を教えてくれました。時には巧みな比喩やユーモアを交えて、会場を沸かせもしました。受講生の皆さんにとっては一生忘れないものとなったのではないかと思います。なお、この日の通訳は菊池万希子さん。いつもながらヴェロさんの想いを的確に私たちに伝えてくれました。では私が面白くて、メモしたことを以下に箇条書きで記してみます。
 
休符に対しての恐怖心を持たないようにしましょう。落ち着いて休符を数えて!
 
フォルテの時、筋力を使いすぎです。リラックスして4拍をしっかり振りましょう。そして、必ず固定された1点を通るように!オーケストラから拍を刻むのが見えないのはいけません。
 
目やジェスチャーでオーケストラとコンタクトを取り、ブレス(呼吸)のタイミングをオーケストラにあげましょう。特にピアノ出身の指揮者はオーケストラに呼吸させてあげない人が多いです。気をつけましょう。
 
あなたの指揮はガールフレンドと連れ添っているのに、他の女性を見て歩いているようです。オーケストラの皆さんもちゃんと指揮者に合わせましょう。皆さん、優しすぎます!
 
頭を下げてはいけません。背筋を伸ばして、頭から腰にかけて一直線に!頭の動きをやめて固定したら、オーケストラにもっと伝わります。
 
(メロディーの途中で次のフレーズの楽器に注意が向いてしまう受講生に)美しい女性とダンスをしたら、席までちゃんと送り届けて下さい。メロディーを奏でている楽器を最後までフォローしましょう。
 
欲しい音は自分から取りに行きましょう。自分が体で表現しないと、オーケストラは絶対欲しい音を出してくれません。
 
交響楽団は弦楽合奏がいるオーケストラです。弦を鳴らすことを意識しましょう。
 
指揮者が音楽にズームインしていってはいけません。指揮台から引くような感覚でオーケストラを俯瞰(ズームアウト)することが大切です。
 
譜面台の高さにも注意しましょう。無理ない姿勢でスコアをめくれるように。
 
意味なく左手を使うことはやめましょう。意味がないのなら左手は使わない方が良いのです。
 
自分にしか分からない表現方法ではメッセージは伝わりません。誰にでも分かる表現方法を考えて下さい。
 
オーケストラに向き合って、「聴くこと」が大切です。指揮は「聴く」⇔「受け取る」の連続なのです。
 
ヴェロさんが伝えていたことは基本の大切さでした。背筋を伸ばした姿勢と体を使った明確な表現。当たり前のようでいて、なかなかできないことです。多くの受講生が頭を下げて音楽に没入してしまっていました。改めてヴェロさんの指揮する姿を見ていると、一見オーバーアクションの様に見える時でも、体の重心は決して崩れず、しっかりオーケストラに向いています。そして、リラックス(脱力)することの大切さも何度も強調していました。実際、指揮したり解説したりしている際のヴェロさんの手は驚くほど脱力し、自由に動いています。このあたりが流れるような透明感を感じるヴェロさんの音楽の秘密なのかなと感じました。
 
手が脱力し、左右の手が独立して、的確にオーケストラに表現を指示するために、ヴェロさんは3つのエクササイズを紹介してくれました。
①片手をまっすぐ上にあげて緊張させ、指、手首、肘、腕全体の順番で順次脱力させ(だらんとさせ)、下ろしていきます。二人一組になって、それぞれの段階で相手がちゃんと脱力しているかチェックすると尚可。
②二人一組となり向かい合って、一人が左手で相手の右手の人差し指、中指、薬指を握ります。握られた方が手首を脱力させ、前後左右上下に自由に動かします。握った方は相手の動きに合わせます。
③右手で正確に拍を刻みながら、左手は4拍毎に滑らかに上下させます。その際、上げる時は手のひらを上に、下げる時は手のひらを下にします。左手が右手から自由になるためのエクササイズです(私もやってみると左手がどうしても右手につられて、滑らかに動きません)。
 
今日ヴェロさんから教わったことは、何かを人に教える時やプレゼンテーションをする時にそのまま当てはまります。自分がメッセージを出している時に誰でも分かる表現方法をしているか、リラックスできているか、そして対象を俯瞰できているかをチェックする習慣を付けていきたいと感じました。
 
その音楽の特徴や背景、表現を人一倍オーケストラに伝えたいというタイプの指揮者で、そのために自身で自らをことさら忙しくしているというヴェロさん。ますますファンになりました。
 
 
この日8時間という長い時間を頑張ってくれた宮城教育大学交響楽団の定期演奏会が2月にありますので、ご紹介します。メインプログラムは上記講習会の課題曲だった「新世界より」です。
 
 2015年2月27日(金)19:00~
 日立システムズホール仙台(青年文化センター)コンサートホール
 ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
 ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
 指揮/日比野裕幸
 ピアノ/増村海香(宮城教育大学大学院2年)
 入場料/1000円(一般) 500円(高校生) 全席自由
       中学生以下、障害のある方 無料
 プレイガイド/ヤマハ、カワイ、サンリツ本店、エスパル仙台
          (1月中旬発売予定)
 問合せ/宮城教育大学 日比野裕幸研究室 022-214-3439
 
 
広報宣伝サポートボランティア   岡
 
 
 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿